19日付の毎日・読売・朝日・東京・神奈川各新聞の地域版によると、18日に開かれた「川崎市ホームレス自立支援推進市民協議会」の第2回会議で、市は川崎区・富士見公園内に公園対策型シェルターを設置することを明らかにした。川崎競輪場東側の市所有地、約2,000平方メートルに、事務・管理棟を含めた2階~3階建てのプレハブを4~5棟建てる。延べ床総面積は約1,700平方メートル。
定員は約200人で、昨年7月末現在、同公園周辺に約150のテントとおよそ265人いるとされるホームレスが当面の入所対象者となる。ひとり原則6ヶ月(更新可能)を入所限度とし、1~2人のホームレスに1室を割り振る個室を中心に提供。24時間利用でき、朝・昼の2食を支給する。嘱託医師や看護婦、職業相談担当者も配置され、下着などの提供や相談にも応じる。運営は社会福祉法人に委託する予定。設置は5年間の期限付きで、今秋以降着工、来春開所を目指す。
委員からは住民への十分な説明を求める声や、住民の意見を取り入れた運営をするよう意見が出された。市の説明会は2月以降に予定されている。
というわけで、この事業は『川崎市ホームレス自立支援実施計画案』でも触れられている、公園に居住するホームレス対策のシェルターである。シェルターなので本格的な自立支援施設ではなく、一時的な緊急保護施設という位置づけだ。これはつまり、同区・堤根にある「愛生寮」とおなじ性格のものである。
「愛生寮」設置の推移についてはこれまでも『川崎市ホームレス自立支援施設問題の推移』で報告してきた。主にJR川崎駅周辺に寝泊りするホームレスが対象で定員250人の施設だが、昨年5月の開所以来利用者数が伸びず、最近になってようやく1日の利用者数が100人を超えたというシロモノであった。
要するに、「ミューザ川崎」なるワケのわからない金食い虫のシンフォニーホール完成に合わせて、JR川崎駅周辺からホームレスを一掃しようと考えたのだけれども、「愛生寮」に流れたのは一部にとどまって、残りはあちこちに散らばってしまったということなのだ。ちなみに平成15年度の市・財政局の報告によれば、「愛生寮」には1億6,000万円ばかりかかっているらしい。うわッ!
さて、今度の富士見シェルターも設置の経緯でそうとうにモメそうだし、できたらできたで利用者が増えてゆくものかどうか、どうにも先が見えない。個室の必要性は『『居住福祉』(早川和男/岩波新書)』でも触れたが、「愛生寮」の2段ベッドなどとちがってその個室が用意されるというのだから、こりゃもう生活環境には雲泥の差があるように思われるのだけれども、だからといって皆がスッと生活を移行するわけでもなくて、やはり相変わらずの小屋住まいを望む人が出ることだろう。そういう人をいかに少なくするのか、市だけでなく、運営を委託される社会福祉法人の力量が問われることになる。
またいずれ詳しくやるが、こういうことは押し売りや説得ではダメなのだ。『支援者たちの失敗(2)』にも書いたけれども、よいものを作りました、だから買え、ではうまくゆかないものなのである。ヒントはある。動機づけと自己決定権だ。自分からそうしたいと思い、それを自分で決めたと思えること。そうでなければ人は動かない。
仕事で部下ひとり動かすのさえ、実のところ非常にむずかしいのは、管理職にある人なら痛いほど肌身にしみているだろう。だから、面倒くさくなって、つい頭ごなしに命令することになる。ホームレス問題でいえば強制排除だが、するとプッシュ・プッシュバック法則だとかリアクタンスだとか、要するに反発や拒絶を生み出す。それでも無理に押し通せばモチベーションが下がってしまい、目的を達することさえ不可能になる。
強制排除すれば近隣に散ってしまうのみであり、強制収容しても期限が過ぎれば再び路上へ帰ってくるだけなのである。強制排除というと人権上の問題とされることが多いのだが、わたしにはそれ以前の問題と見える。問題解決という視点から見て、強制排除ではダメなのだということだ。
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- 『富士見公園に野宿生活者支援施設が出来るらすぃ』「藤沢生活」さん