「傾聴ボランティア養成講座」などというものがあるそうだ。ちょっと古いが6月11日付の読売新聞で紹介されていた。福祉施設でのボランティアを目指す人や、介護ヘルパーが主な受講者だという。
おもしろいエピソードとして、
「批判や反論はもちろん、助言や忠告も不要」
と指導すると、
「相談されているのに、なぜ自分の考えを言ってはいけないのか」
「話を聞いてもらうだけでは、問題を解決できないのではないか」
などと反論されることが多いと紹介されている。
基本的にカウンセリング(この場合はクライエント中心療法)の方法論でゆけば、相談者にはもともと問題を解決できる力が備わっていると考えるところからスタートし、カウンセラーはその力を引き出す手助けをするに過ぎないと考える。だから「指示をしない」のだ。
言い換えれば「自分の意見を棚に上げる」ということなのだけれども、これがなんともむずかしい。受講者たちも、やはりはじめは大いに戸惑ったのだろう。どうやら人間は、自分の意見を述べ、できれば相手に押し付けてしまいたい動物のようなのだ。まぁ、他者をコントロールしたいという、ある種の支配欲なのかも知れない。
わたしもたまに安いコーヒーなど飲みにゆくのだけれど、すると嫌でも他人の会話が耳に入ってくる。まぁたいていは相手の話など聞いていない。返事はしているが、みんな自分がしゃべるのに夢中になっている。なにかの本で読んだが、それこそ、
「自分の話す順番をひたすら待っているかのように」
して、会話が進んでゆく。
以前、カウンセラーが書いた本を読んだ。その先生は、カウンセラーってどんな仕事ですか、と聞かれ、
「人の愚痴を聴く仕事です」
と答えたそうだ。すると相手は、それはたいへんな仕事だと感心していたとか。
ちなみに、先の講座を開いたのは、「ホールファミリーケア協会」という東京のNPO法人だそうだ。興味のある人はどうぞ。