ニート対策にはティーチング(指導・教育)よりもコーチングが有効だ。
ニートの原因として社会構造の変化、すなわち社会が「こう生きれば大丈夫」というモデルを示せなくなったということがあるのだが、これは家庭問題としても表面化していて、親が子供に「こう生きれば幸せになれる」というモデルを示せなくなっている、そういう時代をぼくらは生きている。
これは「予測ができない」「計画どおり進まない」「正解がない」「教えることができない」という時代なのだけれども、この種の変化は産業社会ではとっくのむかしに表面化していた。押し寄せるグローバリゼーションの波や、あるいは「ドッグイヤー(1年で7年分進む)」などと称される度重なる技術革新などで、上から下へ「こうすればうまくいく」というモデルが示せなくなっていた。上司が部下を指導・教育することができなくなったのだ。
それだから経営者たちが、やれ「激変の時代だ」とか「スピードが命」だとか「イノベーションだ」とか「管理職からリーダーへ」とか「ピラミッド型組織からフラットな組織へ」とか「管理・統制の組織から学習型組織へ」とかいって、生き残りを賭けて組織改革に取り組んできた経緯がある。
ビジネス・コーチングというのは、そうした時代の中で注目を集めた。
「指導はできないが、当事者自身の力で問題を解決できるよう、援助する」
組織内の個人が、あるいはチームが、ひいては組織全体が、自発的に学習する組織、すなわちラーニング・オーガニゼーションという概念が生まれる。
こうした産業社会の変化から示唆を受けるとすれば、ニート対策としてもティーチング(指導・教育)よりコーチングのほうが、よりよい結果を出すだろうということだ。単純なビジネス・スキル(名刺の受け渡しだとか書類の書き方)などはティーチングでよいのだが、どんな仕事をしてゆきたいか、そのためになにをすべきか、といったことは、もはや指導できないのだ。あくまでも当事者が自発的に学習することで問題が解決でき、周囲はそのために援助するのみである。
これはまた動機づけとも関わっていて、自発的な選択、達成感や責任感、成長や進歩、他者に認められるといったことが仕事への意欲をもたらし、さらなる学習へと結びついてゆくのだ。上から指導・教育を「してあげよう」ではなく、あくまでも横から「援助する」という姿勢が必要なのである。
実はホームレス対策も同様の問題を抱えていて、自立していない半人前をお役人がご指導申し上げてやろうという姿勢がそこかしこに見られることが、自発的な学習意欲を削いでいる事実は否めない。曲がりなりにもこれまで生きてきたという実績があるのだからなおさらだ。役人を含めホームレスに向き合う人は、コーチングの手法を学ぶ必要があるだろう。
ホームレス、ニート、社会構造の変化、家庭の変化、ビジネス社会の変化、カウンセリング、コーチング……。バラバラだったことが、ここへきてひとつにつながったという感じがあって、個人的には視界が明るくなった。特にビジネス社会の現象と共通項でつながったのは、
「ビンゴッ!」
ちょっとうれしいね(笑)。