ニートと引きこもり(4)

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 前回、ニートや引きこもり、ホームレスなどの分類については、就業意思のあるなしで分類・対策を考えたほうがシンプルになるのではないかというような意味のことを書いたが、5月17日の産経新聞でニート問題が取り上げられたとき、すでに「就業意欲」を分類の概念として取り込んでいた人の記事があった。

 その『sarutoruの日記』では、「就業意欲」と「コミュニケーション」というふたつの軸でニートを分類している。

a=コミュニケーション外向性・就業意欲有=求職型無業者
b=コミュニケーション外向性・就業意欲無=浮遊型無業者
c=コミュニケーション内向性・就業意欲有=焦燥系ひきこもり無業者
d=コミュニケーション内向性・就業意欲無=完全ひきこもり無業者

 そして、このような分類を試みた理由としてsarutoruさんは、

 またこの問題はひきこもり問題以上に、社会不安と結びつけて考えられる可能性があるし、また思想的にも考えるに刺激的なテーマを提供する面がある。

今後ニートがメジャーな言葉になったら、bの浮遊型無業者の類型が必ずや大きくとりあげられ、この類型に対する政策的対応が無業者対策として一番大きな意味をもつようになるのではないか。

 というのだが、まさにここのところが問題で、というのも、現在ちまたで口の端に上っているのはほとんどがこの浮遊型無業者であって、同時にバッシングの対象になっているのもこのタイプであるからだ。要するに、働くつもりもなく毎日ブラブラ遊んでいて経済的には親に依存しているという、いわば「すねかじり」の典型として世間の眼には映るために叩かれるわけだけれども、このタイプがクローズアップされ「ニートとはこういうもの」という認識が定着してしまえば、他のタイプも一緒くたにされてバッシングを浴びることになる。

 また、政策的対応ということであれば、厚生労働省や文部科学省、経済産業省らが、ニートを含んだ若者全体への就業支援として、来年度の予算に1千億円前後の予算を要求しているらしいのだが、これは世間一般の感情に加えて税金投入という二重の意味で、更なるバッシングを引き起こす。むろんニート対策も含んでいるわけだが、あくまでも若者全体への支援であることを忘れてはならないし、浮遊型無業者だけが対象なのでもないことを忘れるべきではない。

 このバッシングの典型として、上山和樹さんの『Freezing Point』で取り上げられている「やしきたかじんの『そこまで言って委員会』」というテレビ番組があったらしい。わたしは当然ながら見ていないけれども、三宅久之(政治評論家)や江本孟紀(野球解説者・元参議院議員)、宮崎哲弥(評論家)など総勢8人の出演者が、おおむねバッシングを繰り返したようである。これは出演者の質がどうのというより、上山さんの、

 視聴者の「ニートへの悪意・苛立ち」を煽り立てる番組の意図を感じる。

 との指摘のとおり、番組制作者がある意図を持ってニートを紹介し、出演者も求められる役割を忠実に果たしたということなのだろうとは思うが、この番組ではじめてニートの具体的な姿に触れた人は、おそらくきわめて否定的な意見を持つにちがいないだろうし、分類などという考えは思いもよらないのではないか。物事についてのいちばん最初の具体的な情報は、その人の中に圧倒的な先入観を作り上げ、以後、これをくつがえすのは容易ならざることなのだ。だから、メディアは恐ろしいのである。上山さんはこうも指摘する。

「やむにやまれぬ引きこもり」と、「外で遊び呆けている自発的ニート」とが、明らかに混同されている。

皆が怒るのは、「対策に税金が投入されている」という一点に集中していた。

 おっと、これってホームレスバッシングとやけに似ているなと思った次第。

★今日のポイント

  • メディアのニートバッシングは、ニートであることを自発的に選択した享楽的なニートだけをクローズアップしているので、注意すべし
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