ニート―フリーターでもなく失業者でもなく 玄田 有史 曲沼 美恵 幻冬舎 2004-07 |
はじめに、ニートの定義について。
『ニート』(玄田有史・曲沼美恵/幻冬舎)によると、
- 就業者
- 失業者:仕事はしていないが、行政の調査期間中(月末1週間)ハローワークに登録するなど、具体的に職探しをしている者
- 就業希望者:調査期間中は職探しをしておらず失業者の枠から漏れたが、就業を希望している者
- 就職内定者
- 学生
- 浪人
- 主婦
以上に含まれない者のこと、らしい。
しかし、厚生労働省の定義では、就業希望者もニート(厚生労働省の呼び方は若年層無業者)に含まれる。つまり、就業の意思があろうがなかろうが関係ない。年齢は15歳~34歳で、この厚生労働省版のニートが2003年に52万人いたと、先日発表の労働白書は報告していたわけである。しかし、総務省統計局の「03年労働力調査」は、同人数を64万人と報告している。この12万人の差がなんなのかわからないのだが、わからないことはひとまずそのままにしておく。
独立行政法人労働政策研究・研修機構副統括研究員の小杉礼子さんは、このニートを、
- ヤンキー型……反社会的で、享楽的。「今が楽しければいい」という人
- ひきこもり型……社会との関係を築けず、こもってしまう人
- 立ちすくみ型……就職を前に考え込んでしまい行き詰まってしまう人
- つまずき型……いったんは就職したものの早々に辞め、自信を喪失した人
に分類している(引用部分はkatharinaさん運営のサイトから)のだけれども、この「就業意思のあるなし」は非常に重要なことなんじゃないのだろうか。つまり「働かないのか、働けないのか」ということに結びつくのだが、陳腐な見方、陳腐とはつまり一般的ということだけれども、陳腐な見方をするならば、ヤンキー型には就業意思がないと思われようし(むろんヤンキーにだって事情はあるはずなのだが)、その他は意思はあってもどうにもできぬ、といったところにでもなるのだろうか。もっとも、立ちすくみ型には、自己実現のためのえり好みから就業しない者もいるようで、これは「自己愛肥大型」とでも呼ぶべき存在のようでもあるが……?
ちなみに、これをホームレスのタイプや引きこもりと比較してみると、
ヤンキー型……社会不適応型……反社会型つまずき型……意欲喪失型……脱社会(非社会)型ひきこもり型……意欲喪失か自己放棄型……脱社会(非社会)型立ちすくみ型……????
なんだかよくわからなくなってきてしまったが、むしろ「就業意思のあるなし」で分類、対応を考えたほうがシンプルになるのかも知れない。ここのところ、もう少し考えたい。
いずれにせよ、ヤンキー型や自己愛の肥大したタイプばかりがクローズアップされてしまうと、その他のタイプまでが「怠け者」「甘えている」といった紋切り型の批判にさらされることになろうし、現にニートはすでにそうした批判にさらされているようだ。理由は人それぞれ、原因は複合的でよくわからない、ということはあるにしても、少なくとも「こういう心情である」というところを共感的に示すことができれば、十把ひとからげに論じられるような誤解は減るにちがいないのだが……
★今日のポイント
- ニートには自発的に働かない者と、なんらかの事情で働けない人とがいるので、分類と対策には就業意思のあるなしが重要