やや古いニュースで恐縮だが、東京の府中で起きたホームレス殺害事件は、相次いだ襲撃事件を含めて同一犯との見方が強い。20~30代の男で身長160~170センチ、痩せ型で短髪、メガネをかけていたという報道も一部にある。
東京・府中市でホームレスの男性が殺害された事件で、ことし3月に隣の調布市でも別のホームレスの男性が男に鉄パイプのような物で殴られけがをしていたことがわかりました。周辺ではことし3月以降ホームレスの男性が襲われる事件があわせて5件に上り、警視庁はいずれも同じ男による犯行の疑いもあるとみて調べています。
東京都府中市の公園で路上生活をしていた福岡正二さん(74)が殺害された事件で、犯行前の今月二十日に国立市で起きたホームレス襲撃事件の現場付近の防犯カメラに、白いワイシャツに黒ズボン姿の三十歳ぐらいの男が写っていたことが府中署捜査本部の調べで分かった。府中市と国立市の両事件の関連とともに、カメラの男が事件に関与した可能性があるとみて調べている。
国立市の事件は、府中市で福岡さんが殺害された現場から西へ約五キロ離れた多摩川河川敷で、二十日未明に発生。テント内で寝ていた男性(63)が、男に鉄パイプで頭を殴られ重傷を負った。現場近くの防犯カメラに、犯行時間帯の前後二回にわたり三十歳ぐらいのやせ形で短めの頭髪の男が写っていることが分かった。男は自転車に乗っていたという。
府中市では三月にもホームレスの男性二人が男に襲われ、重傷を負った。この二人の男性は調べに対し、男は二十-三十代でやせ形、短髪で自転車に乗っていたと証言しているという。
また、府中市で亡くなった福岡さんの死因は司法解剖の結果、頭部への打撃による脳挫傷と判明した。
国立市の事件は、6月20日午前4時半ごろ、多摩川の河川敷で犯人の男がシートを切りつけたあと、鈍器で男性の頭を3回程度殴りつけ、約2週間のけがを負わせた。
目撃情報などから、男は160~170センチでやせ形、短髪で眼鏡をかけた30歳くらいとみられる。近くの防犯カメラには男が自転車で走り回る姿が複数回写っており、捜査本部は襲撃対象を探していた可能性があるとみている。
次の引用は3月の被害者への取材記事だが、なんとも生々しくてぞっとする。これを読むと、命が助かったのは幸運だったことがわかる。おそらく、ふつうなら死んでいるはずだ。殺す気がなければ、金属バットだか鉄パイプだか、そんなもので頭を殴りはすまい。犯人には明確な殺意があったのだ。
3月6日午後5時過ぎ。男性は京王線西調布駅前の公園で植え込みの前に寝転がり、毛布をかぶってうとうとしていた。「キーッ」。自転車のブレーキ音が聞こえた。
「誰かが水飲み場に来たんだな」と思った3~4秒後。ガツン、ガツンと金属バットのようなもので頭を殴られた。血が噴き出したが、襲撃はやまない。頭ばかりを執拗(しつよう)に狙われた。
「この野郎」。叫んではみたが、起き上がれない。あおむけ状態のまま手で頭をガードしたが、殴られた回数は9回に及んだ。相手は無言だった。4枚の重ね着すべてに血が染みた。毛布も真っ赤に染まった。「頭がぼーっとなって、これが死ぬという感覚なんだと思った」と振り返る。
ようやく相手が背を向けたとき、斜め後方から姿を見た。がっちりした体格の中年男に思えた。ゆったりと自転車をこいで遠ざかっていった。自転車も男の服の上下も黒っぽく見えた。ただ、目に入った血が視界を遮り、確かな記憶とは言い切れない。他に目撃者はいなかった。
ところがこの犯人のターゲットは、どうやらホームレスだけではなかったらしい。子どもまで脅しつけていたとなると、事件はたちどころに身近なものとなる。周辺住民の不安は一気に広がるだろう。
調べや府中市教育委員会などによると、今月25日午後2時45分ごろ、現場から約1.5キロの範囲内で、自転車に乗った若い男が男子児童に「ぶち殺してやる」と声を掛ける事案が発生した。
男は20-30歳で、身長170センチ前後のやせ形。黒っぽいズボン姿で銀色の自転車に乗っており、警察に通報したという。「小学生に「殺してやる」=2日前、自転車の若い男-3月襲撃と類似・公園男性殺害」(2008年6月28日・時事ドットコム)
ホームレスという属性だけを狙っていることから、「個人的な怨恨」という線はなさそうである。子どもまで視野に入れていたのだとすると、「社会的に無価値で迷惑なホームレスは殺してもよい」というホームレス否定論者のなれの果てでもなさそうだ。しかし、ホームレスという存在に敵意を抱いている可能性は依然として残る。いずれにせよ犯人は、社会的に弱者とされている層を標的としていることはまちがいないようだ。
これだけ情報が出ているのだからいい加減に捕まってもよさそうなものだが、逮捕の一報は未だにない。ホームレスだけでなく、次の被害者は子どもの可能性すらある。犯人逮捕の報を待ち望む。