ホームレスが販売する雑誌「ビッグイシュー日本版」が、25日午後5時から、第1回「東京ホームレス会議」を開くと、「聞いて知って語って 第1回「東京ホームレス会議」開催 – OhmyNews:オーマイニュース “市民みんなが記者だ”」が伝えている。
「会議」前半は、実際の販売者3人と企業のCSR担当者らによる鼎談。後半は、販売者約20人が定期的に開いている販促会議を観衆の前で行う。普段の販促会議の「売り上げを伸ばすにはどういった工夫が有効か」「トラブルに巻き込まれたときの対処法は」といった議論の様子をそのまま見せる。
定員100人の枠は、企業の関係者やホームレス支援者、学生らですでに埋まった。参加予定の販売者は20~30人。終了後はパーティーで、ホームレスと企業人らとの交流を促す。
「ホームレスの生の声を聞ける場が欲しい」という協賛会社からの提案に答えて実現したそうで、これはこれで一見の価値はありそうだ。定員の枠はすでに埋まったらしいが、しかしホームレス支援者まで参加するのはどうかとは思う。ホームレスと一般市民との交流が目的なのだから、その枠をボランティアが潰してしまってはマズいだろう。身内で盛り上がってもしかたがあるまいに。
「『ビッグイシュー』は、街頭でホームレスが売っている雑誌。ホームレスであることを嫌がらずに買ってもらうというのが、われわれの願いなんですが、正直な話、東京圏の場合、『何となくホームレスからは買いにくい』『ホームレスと話をするのに抵抗がある』という声があって、苦戦している。人口でははるかに上回るのに、東京での販売部数は関西圏と同程度しかないのです。関西圏では、販売者に関らず、買う人は買う、買わない人は買わないではっきりしているんですが」
と代表の佐野さんは背景を説明する。
関東と関西とでは、ホームレスに対する市民感情、行政の対応、あるいはホームレスの立場やその生活など、ホームレス問題を取り巻く環境におおきなちがいがあることは、ぼくも常日頃から感じている。
ありていにいえば、関西ではホームレス問題は日雇労働者の問題であり、寄せ場の問題である。釜ヶ崎だとか西成だとか、ホームレスだけでなくなにやら魑魅魍魎(ちみもうりょう)さえ跋扈(ばっこ)する異空間が、この問題の中心にドカンと腰を据えている。それゆえ関西の支援団体には、労働運動系が特に目立つ。ホームレスも上はピンから下はキリまでいて、それだから支援する人は支援するし、嫌う人は徹底的に嫌うのだと思う。
以前、ホームレス問題を議論するネットの掲示板に、ホームレスを激しく非難する意見を持つ人が参加していたことがあった。この人はホームレスの生活やらなんやらを槍玉に挙げて、ホームレス対策を厳しくするよう求める姿勢を貫いていたのだけれど、聞けば西成で少しのあいだホームレスだったのだという。彼にしてみれば、よほどひどい世界を見てきたのにちがいない。ただ、彼のまちがいは、彼の眼と体験を以って別の地域(東京や川崎)のホームレス問題に首を突っ込んだことだったのだが。
関東でも寄せ場の問題はもちろんある。東京の山谷や横浜の寿町がその代表だ。寄せ場を語るぶんには、それは日雇労働者の問題となる。がしかし、これは関東人の気質なのかも知れないが、ホームレスと日雇労働者問題を直結して考える人が、関西ほど多くはいない気がする。
関東におけるホームレスのイメージは、公園や河川敷に小屋やテントを持ち、自転車で空き缶を集めている人、程度が一般的であろう。または、駅構内やビルの陰にダンボールを敷いて寝泊りしている人、あるいはゴミを漁っている人……。ホームレスが日雇労働をしていると考える人は、少ないのではないか。あるいは、日雇労働そのものが、すでに関東人の頭からは消え失せているのかも知れない。
関西のホームレスは、概して元気で威勢がよくエネルギーに満ち溢れていて、関東のホームレスはそれに比べれば元気がなく、エネルギーに満ち溢れてもいない印象がある。仕事を失くした日雇労働者と見るよりも、単に住む家のない人間と見えるのだろう。それを気の毒と思うか、怠け者と思うか、というちがいはあるにしてもだ。
関東で『ビッグイシュー』の販売が伸びないのは、ホームレスが労働者として見られていないことに、その一因があるのかも知れない。仕事にあぶれて路上に堕ち、それだから『ビッグイシュー』を売っているんだぞという、むかしも今も労働者なんだぞという、仕事をしているんだぞという、そういう眼では見られていないのかも知れない。関東では、労働者としてのホームレスが、関西ほど認知されていないのだと思う。
さて、この「東京ホームレス会議」、オーマイニュースではその模様を、当日午後5時からライブ中継するのだそうだ。興味のある人はご覧になってはいかがかしら。さすがにこの時間からのネットカフェ入りは早過ぎるので、ぼくは見られない。ていうか、ホームレスがホームレスを見てもしかたがない気もするわけですが(笑)。