生きてゆくうえで大切なことは、たいていシンプルだ。そうしてむかしから幾度となく語り継がれ、ごくあたりまえの考えになっているが、そのために忘れ去られ、あるいはないがしろにされている。それらをもう一度思い出してみる。
自分との約束は守れ
約束というと他人とするものだと思ってしまうが、その前にまず自分自身と約束しよう。他人に対する以前に、自分自身にウソをついたり、自分をごまかしたり裏切らないことだ。
自分に対してすることは、他人に対してもする。ウソやごまかしの多い人は、まず初めに自分にウソをつき、自分をごまかしている。自分をごまかさず、自分にウソをつかないことからはじめよう。まず最初に、自分自身を裏切らないことだ。
たった今、この瞬間を大切に生きろ
今、とは、今この瞬間、たった今のことだ。「い」から「ま」へと移ってゆく、そのあいだの瞬間だ。瞬間は瞬間でしかなく、過去でも未来でもない。人間は、この「たった今」という瞬間にだけ存在する。ほかの時間を生きることはできない。
ある人はこれを「1秒前のことも考えず、1秒あとのことも考えない。今にいる」というような表現をしていたが、いつでも「たった今、この瞬間を大切に生きる」ことが大事だ。時間というのは瞬間瞬間が永遠につづいてゆくことだから、いまこの瞬間に集中し、充実させよう。
ただし、これは「今さえよければいい」「今が楽しければよい」といった刹那的な、キリギリスのような生活の意味では決してない。無計画に生きることと、瞬間を充実させることとは、まったく別の次元の話だ。
今の自分に自己満足するな
自己満足に陥ってはならない。上の話と関連するが、たった今、この瞬間の自分に最高の評価を与え、自分を肯定しながら、同時にさらに上を目指そう。「こんな自分はダメ」と自己否定せずに、今の自分をベストと考え、100点満点を与えながら、同時に次は120点を目指すのだ。
今の自分を「ベストだ」と肯定的に受け容れてゆくことと、さらに上を目指すことは、まったく矛盾しない。「このままでよい」と思った瞬間から、人は退化しはじめる。
嫌なことをやれ
自分の好きなこと、やりたいことだけやって生きてゆけたら、どれほど楽しい人生だろう。けれど、それは楽しい人生かも知れないが、ただ楽しいというだけだ。楽しいだけではなんの成長もない。人間には喜怒哀楽という幅広い能力が備わっている。ならば、すべての能力を使え。嫌なことを避けてとおる人生など、生きる値打ちさえない。
楽しいことをするのは誰でもやっている。嫌なことをする人はごくまれだ。だから、他人のやりたがらない、自分が嫌だと思うことをやれ。人がそれを嫌がるのは、それが苦しくつらいからだ。では、自分は、人が嫌がって避けてとおりたがることをやろう。
常に苦しい道を選べ
上の話とおなじことだが、楽するよりも、常に苦しい道を選ぼう。なにかに上達するには訓練が必要なのはあたりまえだが、訓練は常につらく苦しいものだ。しかし、訓練しなければ上達はない。スポーツにおいても芸術においても、そして人生においても。