最近では「傾聴ボランティア」などが知られるようになり、より効果的な援助をおこなうためのカウンセリング技法が、にわかに注目を集めています。ボランティアは一般に「やる気、世直し、手弁当」などといって、その自主性がたいへんに尊重されますが、ものごとを進めるためには「やる気、知識、スキル」の3つが必要です。そこでこのカテゴリでは、ホームレスなどを支援するボランティアに必要なカウンセリングの知識とスキルを簡単にまとめました。
カウンセラーの3条件・基本的態度
これはあらゆる種類のカウンセラーに求められる基本的な態度の条件で、以下の3つをいいます。ボランティアは必ずしもカウンセラーである必要はありませんが、人に手を貸そうとする際の基本的な態度でもありますから、ぜひ心に留めておいてください。
1.自己一致
「純粋」などとも呼ばれますが、カウンセラー自身が裏表のない態度で、ありのままの自分自身でクライエント(相談者)に接することをいいます。人は自分を着飾ったり装ったり偽ったり偉く見せようとしたり卑下したりすることが多いので、これは簡単なようで実はかなりむずかしいことです。
2.無条件の肯定的尊重
「尊重」を受容、配慮、関心などと読み替えることもありますが、これはクライエントに対して自分の判断や意見、価値観をはさまず、また批判的な態度を取らず、クライエントをひとりの人間として積極的に、そして肯定的に受け容れることをいいます。ひとことでいうと「自分の意見を棚に上げる」感じに近いでしょうか。
3.共感的理解
これは「感情移入的理解」とも呼ばれ、クライエントのものの見方で世界を見、感じ、理解することです。来談者中心療法のロジャーズは「クライエントの私的な世界をあたかも自分自身のことのように感じ取り、しかも「あたかも~のように」という性質を失わないこと」と定義していますが、これは同情とはまったくちがうことを意味しています。ちなみに、英語で同情はシンパシー(sympathy)、共感(感情移入)はエンパシー(empathy)です。
……ということで、対人援助業務をより効果的におこなうためには、まずこれら3つの態度を身につける必要があります。とはいうものの、プロカウンセラーであっても常に完璧にこなせるわけではありませんから、できないからといってあまりむずかしく考えずともよいでしょう。むしろ、悩みながらも前に進み、少しでもこの3条件に近づく気持ちを持つことのほうが大切です。
また、これはなにもボランティアに限った話ではなくて、ふだんの日常生活でも実践できることですから、身近な人を相手にどんどん練習しておくのもよいでしょう。その練習自体がカウンセリングとなって、思いがけずに相手との関係がよりよくなるかも知れません。これをカウンセリングでは「棚からボタモチ」と呼んでいます。ウソです(笑)。
次回は「傾聴とラポール(信頼関係)」について。アディオス、アッミーゴッ!