Side A
ことの起こりはこんなことだ。かなり以前になるが、あるボランティアの運営するブログにその人の友人であるボランティアの男性がコメントし、ぼくがその男性にあいさつをしたところ無視されたという、たったそれだけのことなのである。けれど、ぼくはそのことでずいぶんと悩み、なぜ無視されたのか、なぜ相手をしてもらえなかったのか、考えつづけて相当に苦しんだものだった。
のちにブログの管理人からいろいろに言い訳されたが、結局は、
「そんなことで傷ついていては世の中は生き難い」
というお叱りをいただいたのが、ことの顛末であった。
いや、ぼくは、こんなことで傷ついてしまう自分を、むしろ誇りにさえ思っている。こんなセンシティブな感性は、ふつうはこの歳ではもう持てないものだろう。それを持っているということを、ぼくはかえって誇りに思うのだ。麻痺するままに感性を鈍化させてゆくだけのそこいらの大人たちよりも、少年のようなもろさを抱えたままの自分であることを、むしろ誇りにしている。そのことに躊躇はない。
Side B
夕べ、人なき夜道を歩きながら、涙が止まらなかった。理由など知らない。胃が締めつけられ喉が熱くなり鼻の奥にきな臭いものを感じ、そうして眼から涙がどっと溢れ出すのを止められない。何度も何度も涙が溢れ出す。震える唇を噛み締めても、どうやっても止められない。なにが哀しいのか、なにが辛いのか、そんなことはもう知らない。ただ、ひたすらに泣くだけだ。
泣くほど辛く哀しい出来事はたくさんある。死にたくなることだってたくさんある。でも、こんな自分は世界中にぼくひとりしかいないのだ。世界中どこを探したって、ぼくはぼくひとりしかいないのだ。そんなぼくを抱き締めて生きてゆくしかないじゃないか。
好きなだけ泣くがよいさ。泣けよ、ほら。