日本のホームレスの定義は「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」にある、
「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」
という文言が公式なものでしょう。要するに公園や河川敷などにテントや小屋を持っていたり、駅やビルの谷間などにダンボール一枚で寝ている人々を指しますが、一般市民にとってもその捉え方にあまり違和感はないかも知れません。
がしかし、世界的に見てもこれは極めて限定的なホームレスの定義であり、それゆえにホームレス問題の改善が進みにくい原因になってもいるのです。
たとえばイギリスのホームレス法による定義では、
- 占有する権利のある宿泊施設を持たない者
- 家はあるが、そこに住む者から暴力の恐怖にさらされている者
- 緊急事態のための施設に住んでいる者
- 一緒に住むところがないために別々に暮らさざるを得ない者
(『居住福祉』早川和男/岩波新書)より
とされ、その範疇にドメスティック・バイオレンスや家庭内暴力にさらされている被害者や、引き離された家族など、実に多様な人々を含みます。
またアメリカではホームレス援助法(マッキーニ法)で、
- 夜間に住居がない者
- 一時宿泊施設に宿泊している者
などと定められ、やはりその定める範囲は非常に広域です。たとえば自然災害による被災者などもホームレスとされます。
フランスにおいてはホームレスに対する単独法というものさえありません。この国ではホームレスへの差別と社会的排除を防ぐ視点から、あらゆる住宅問題を抱えた人々に対する手厚い支援策によってすべてがまかなわれているのです。したがって、長期間にわたり路上生活を送る人はほとんどいないといわれています。
一般に欧米の先進諸国における定義は、ドイツのホームレス生活者扶助連邦協議体(BAG-WH)による、
「ホームレス生活者とは、賃貸借契約によって保証された住居をもたない人」
ということばに代表されているといってよいでしょう。広く住居の問題として捉えることにより、社会排除的な問題を抑制する効果もあるといえます。