川崎のホームレスが減少したと8月25日付・読売新聞川崎版が報じた。川崎市では7月にホームレス数の調査をおこない、同月29日現在で938人(概数)を確認。90人減少したという。内訳は川崎区605人、幸区132人、中原区92人、高津区35人、宮前区6人、多摩区62人、麻生区6人。場所は公園など351人、水路・河川敷305人、公共建物周辺105人、駅周辺89人などとなっている。市地域福祉課では減少の原因として、「愛生寮」などの自立支援施策の効果だと分析している。
さて、「愛生寮」とはシェルター(ホームレス一時宿泊施設)の名称だが、この施設を利用できるのはJR川崎駅周辺などに起居していたごく一部のホームレスに限られている。全体の減少の原因が「愛生寮」などにあるとする福祉課の分析は的外れだ。「愛生寮」が原因とするならば、実際に施設から自立していったホームレスの数が公表されねばならないが、あいにくと数字が出ていない。出せる数字ではないからであろう。いずれにせよ、1年ちょっとで90人の卒業生は多過ぎる感がある。せいぜい10人程度ではないのか。卒業生ではなく「落第生」として再び路上に戻った可能性もある。
あまり知られていないが、実は「愛生寮」の設置と前後して、市内各所でホームレスを排除する動きが多発した。たとえばJRの某駅前では、ベンチに寝泊りしていた4、5人(?)のホームレスが追い払われてベンチがなくなり、仕切りのついたベンチが新たに設置された。やや離れた自転車置き場では、一角を占拠していたホームレスがいなくなり、今は鉄柵が張り巡らされている。さらに離れた高架下の公園を使っていたホームレスも荷物を撤去されたようだ。
これらは「愛生寮」の利用対象者地域ではないので、むろん彼らは「愛生寮」を使うことができない。どこかへ消えてしまったわけである。要するに、ホームレスの減少は「愛生寮」の効果などではなく、単なる排除活動の結果であると考えるのが妥当であろう。
もうひとつ、ホームレス減少の可能性として考えられるのは、数えまちがいだ(笑)。テントを張って24時間定住しているホームレスならともかくも、昼間はいなくなり夜間のみに現れる移動型のホームレスなど、数を把握するのがそもそも困難だ。調査の日・時間にたまたまいなかった、あるいは目に付くところにはいなかった、またはいたのだが調査員はホームレスと気づかなかったなど、見落とす原因を挙げればきりがない。そもそも、わたしが勘定に入っていない(爆)。
この調査をもってホームレスが減少したなどという結論はあまりに早計に過ぎるだろう。とてもじゃないが鵜呑みにはできない報道である。