ニートやフリーター対策に藤沢市が「レッツしごと塾」なる若者支援事業をはじめるのだと、8月19日付の日経新聞が報じている。講演会やカウンセリングを中心に、当事者だけでなく親を対象とした個別相談会なども実施するそうだ。ハローワークの就職面接会にも参加するという。若者の現状は「地域社会にとっても大きな損失」(勤労市民課)として、腰を上げたらしい。
「藤沢生活」というブログがあって、藤沢市の情報をあれこれと発信している。最近見たら「藤沢生活改め湘南生活」となっていた。運営するにせ藤沢人さんとわたしは、氏の言によれば「blogの腐れ縁」ということになるらしい。この「ミッドナイト……」を開設したごく初期からの付き合いであり、それがいまだにつづいている。藤沢市におけるホームレス事情などほとんどないに等しいだろうから、まさに腐れ縁である。
だが、実のところ、藤沢市とわたしはまんざら無縁でもない。若いころ付き合った女性に藤沢の出身者がふたりいた。とりわけ、ひとりの娘には忘れ得ぬ想い出がある。余談ながら、とにかくこの子はたいへんな美人であった。まだ二十歳前の小娘であったが、あと5年も経って女ざかりとなったならば、いったいどうなってしまうのかと思えるほどにべっぴんであった。
わたしは当時写真をやっていたため、モデルなどの美人を嫌というほど見ていた。かつて写真家の浅井愼平さんが自著に、「アマチュアがいういい女は、寝るにはいい女……」と書いていたが、プロモデルの美人度はそれほどに凄まじいものである。よくなにかのショーなどに登用されるコンパニオンという美人たちがいて、カメラ小僧の格好な餌食になっているけれど、こと外見に限っては、残念なことにモデルには遠く及ばないのが実情なのである。
さて、そのように厳しい審美眼を持つわたしを驚かせた彼女であったが、外見のみならず、その性格もたいへんにすばらしいものであった。優しく穏やかで気立てがよく、温かでほがらかでよく気がつく。頭がよくて切れ者で仕事がデキる。人気があって人に好かれて動物に好かれる。思いやりがあって優しくて気立てがよくてほがらか頭がよくて切れ者で……これはもう書いたか。えぇと、とにかくそのような娘であったから、常に男どもが群がっていた。男だけではなく女も群がっていた。犬も猫も群がっていた。その喧騒ぶりは凄まじいものであった。そして、わたしと出会ったときも男がいた。彼は、わたしの友人であった……
閑話休題。
以前、このブログを調べていたら、藤沢市の市民会議室からアクセスがあったことがある。なんだろうと思って見に行ったが見られなかった。それきり忘れていたのだけれど、ニート対策の参考に、このブログをご紹介いただいたのかも知れない。役に立ったとは思えないが、参考にしていただけたのならばこれほどうれしいことはないが、そのようなことはあり得ない。
ところで先の娘の話だが、わが友人の彼女でありながら、友人とあまりしっくりといっていなかった。どうやら友人は夢見心地のようであり、同時になんとはなしに気後れしていたようだった。それを気に病んだものか、わたしは彼女からの相談をひっきりなしに受けるようになったのであった。そのたび、わたしは彼女を慰め励ますのであったが……
そうそう、にせ藤沢人さんの記事によれば、ホームレスが販売する雑誌「ビッグイシュー」を、川崎市のホームレスも売ることになったそうだ。元になった神奈川新聞の記事は「川崎でもホームレス自立支援雑誌販売へ」だが、それによると説明会には10人ほどのホームレスが集まって、7人が販売者登録をしたという。川崎には1,000人以上のホームレスがいるにしてはこの数字、メチャクチャ少ないねぇ。
それでホームレスの彼女の話に戻るのだけれど、いやちがう、彼女はホームレスとは関係なかった。ともかく、そうこうするうちに友人とうまくゆかなくなり、いつしかホームレスのわたしと付き合う仲になっていったのだった。ちがった。わたしはまだホームレスじゃなかった。とにかく、だがしかしそれにしても、わたしにはいまだ友人も友人のままでいたし、また彼女のさまざまな相談ごとに乗っていて、恋人というよりもむしろ妹のごとき存在、あるいは彼女にしてみれば兄または父親の代わりといったものであったのかも知れなかった……のかも知れなかった……のかも知れなかった……
あー、にせ藤沢人さんはこのブログを「ロス・マクドナルド」あるいは「ネブラスカのスプリングスティーン」などと評されるのだが、わたしとしてはボギー(ハンフリー・ボガート)であったりギャビン・ライアルの描く世界を目指したいのだけれども、ボギーといえばやはり「カサブランカ」。イングリッド・バーグマンの美しさは筆舌に尽くしがたかった。
で、話は変わるが、彼女すなわちイングリッドは……ちがう、イングリッドによく似た藤沢出身の彼女であったのだけれど、わたしたちもまたどこでどうすれちがったものか、当時フランス領であったモロッコのカサブランカで、ほどなく別離のときを迎えてしまったのであった。いや、モロッコに行ったことはなかったな。それはさておき、最後に彼女はいった。
「リック、あなたと一緒にいるわ」
いや、俺は健次郎なんだけど……? ともあれ彼女をダコタに押し込んで飛行機は離陸。
「新しい友情のはじまりだな」
かなんかいって警察署長と一杯引っ掛けたもんさ。しかし、以来、彼女の幻影に取り付かれたわたしは、魂の抜け殻となって、廃人のごとくいまだ路上をさまよいつづけているのだ……
すいません。大ウソです(笑)。いや、にせ藤沢人さんが、くだらない雑談が好きらしいというので、そのリクエストに応えてみました(笑)。