ホームレスを支援するボランティアがいるのはご存知でしょうが、彼らは通常、衣類や雑貨などを配って歩いたり、炊き出しをおこなったり、生活相談を受けたり、福祉事務所と交渉したりしますけれども、おおむねその立場と目的によって3種類ほどにわかれています。
- 労働・社会運動系
- 日雇い労働者市場である寄せ場を中心に、労働条件や賃金闘争などの労働運動を主体に活動してきた団体が大半で、したがって失業対策や雇用促進などの要求を行政に突きつけてゆくタイプ。ホームレスを組織したりデモをおこなったり街頭で演説をすることも多い。むろん、インターネットでも、その活動は活発である。
- 宗教系
- 自身の宗教的な立場からホームレスを救済しようとするタイプ。コミュニケーションを通してホームレスの心理面に働きかけ、精神的なサポートをおこなおうとすることが多い。なぜか大半はキリスト教徒で、他の宗派であることはまれ。
- 福祉系
- 現行の福祉制度をホームレスに適用させることを主眼とするタイプ。ホームレスと福祉事務所とのあいだを橋渡しする役割を果たす。多くのホームレスは福祉の知識も少なく、また交渉能力も高くはないので、知識を与え交渉のサポートをすることが多い。
さて、これらのボランティアとホームレスとのあいだには、相性の良し悪しがあります。一般的にいって、労働・社会運動系のボランティアは失業・不良系のホームレスと相性がよいのです。両者とも欲求水準が高く活動的なため、行政や世論など、外部の世界に対して積極的に働きかけてゆくような運動に同調しやすいのです。
対して宗教系のボランティアは、退却・厭世系のホームレスと相性がよいです。退却・厭世系のホームレスは欲求水準が低く精神的なエネルギーが不足しているので、デモや抗議行動などといった外部に向けての運動に同調しませんし、みずから社会復帰に向けて歩み出すこともできません。その不足している精神的エネルギーを補充する役割を果たすのが、宗教系のボランティアなのです。要するに、心の支えになるのですね。
最後に福祉系のボランティアですが、これは特別に相性といったものはないようです。とはいうものの帯に短し襷(たすき)に長しみたいなところもあり、逆に不都合もあるようです。たとえば、退却・厭世系のホームレスに的確に接するには、ある程度の心理・精神医学的な知識が必要なのですが、なにも知らずにやって、支援が無駄骨に終わるなどのケースも聞きます。あるいは不良系のしたたかさに振りまわされ、自身の生活に支障をきたすような話もあるらしいです。そういう点から見れば福祉系のボランティアは、ふつうの失業系のホームレスと最も相性がよいのではないかと思われます。