地域の自己責任

スポンサーリンク

近ごろは自己責任論というものが幅を利かせていて、まぁ多様性が受け入れられる時代になったものだからそうなったという流れはあるのだろうが、なにかにつけて自己責任にするのが流行なので、わたしも少しこの流れに便乗しようと思う。

で、なんの自己責任なのかというと、地域の自己責任の話である。ホームレス問題でありがちなことに、ホームレス関係の施設を作るのに地域住民が反対するケースがある。まぁなぜこの場所なのか、行政の説明責任だとか理由はいろいろありはするのだけれども、そもそも近隣地域ではホームレスが増えることをなぜ許してきたのか、その視点が圧倒的に欠けていることが多い。

これは、地域力の低下、すなわち人間関係が希薄になり、自分たちの住む地域を自分たちのものと考える人が少なくなって、地域に無関心な人が増えたことが大きな要因だろうと思う。それが大量のホームレスの流入を許してしまう結果につながる。きのう今日、地域に突然ホームレスが増えたわけではない。今日になっていきなり裏の公園に数百人ものホームレスが現れたわけではないのだ。波はあるにしても、徐々に増えていったはずである。では、それまで地域の人たちはいったいなにをしていたのだろうか。

初期段階で自治会などが個別に当たり退去願うなり、これ以上増えないように巡回活動などをおこなっていれば、町なかにホームレスの巨大なコミュニティなど到底できようもなかったはずである。自己責任論が闊歩するのなら、地域の自己責任もまた問われることになるだろう。ありていにいえば、
「自分たちの住む地域をほったらかしにしてきたツケが回ってきた」
自己責任論によればこうなる。

さらに奇妙なことには、公園などのホームレスを「迷惑だから退去させよ」と行政に迫りながら、そうしたホームレスを減らすための施設を作るというとこれまた「嫌だ」という、筋の通らないこの矛盾。こうしたことが「住民エゴイズム」や「地域保守主義」と非難される原因になっている。

以前から思っているのだけれども、地域はホームレス問題ともっと前向きに取り組むべきだ。ホームレスが数百人もいる地域など、全国でも滅多にないのである。このまれな条件を建設的に利用しようと考える人がなぜいないのだろうか。たとえば住民の持ち回りによる巡回パトロールなどは、それまで知らなかった他の住民と知り合える絶好の機会になり、そこから新たな交流が生まれる可能性を秘めているし、実際にそのような事例が報告されてもいる。出会いの機会としてだけでなく、地域の一員としての自覚も高まるだろう。さらに、子供や若者、あるいはお年寄りなどにとって、地域社会への参加機会、すなわち地域での役割が得られることの効用は大きいはずだ。彼らを苦しめている問題のひとつに、社会的役割からスポイルされているということがあるからだ。

あるいはまた、ホームレスの多い地域として積極的にアピールしてゆく方法もある。極端な話、問題を逆手に取って「ホームレス問題で町おこし」をするぐらいの発想があってよい。意欲的に取り組む町として注目を集めもし、地域力も持ち直してくるはずだ。

ネガティブな問題をネガティブに処理しているだけのところからは、なにも生まれないのではないか。これまでとはまったくちがった発想で問題に臨む人が、地域から出てこないものだろうか。そのときはじめて、あらゆる批判を一掃できるようになるのだと思う。

関連記事

アメリカ漫画と韓国のホームレス施設... 「EP : end-point  科学に佇む心と体」という科学関係のブログを運営されている雨崎良未さんからのネタをご紹介。 アメリカの有名な漫画に「Doonesbury@Slate」というのがあって、ここに準レギュラーでワシントンのホームレスが登場するらしい。そのAliceとElmontは図書館...
川崎市が「愛生寮」利用者枠拡大の意向... 6月11日 きのう開かれた川崎市議会で福祉局長が、ホームレス一時宿泊施設「愛生寮」の利用資格枠を拡大したい意向を示した。当初、「川崎駅周辺在住一年以上」といっていたのだが、先日の対象地域拡大に加え在住期間まで短縮し、開所一ヶ月が経過して、なお予想を下回ったままの利用者数をなんとか増加させたいようだ。...
ホームレス絞殺事件 読売新聞やら朝日新聞やら毎日新聞やらによれば、7月26日午後8時ごろ、川崎市内の多摩川河川敷に小屋掛けしていたホームレスが、おなじホームレス仲間を絞殺しちゃったんだって。容疑者は自首したというが、嫌な事件だなァ…… 小屋の中で一緒に酒を呑んでいたんだが、金銭問題をめぐって口論になったんだと。殴り...
対等で信頼できる人間関係  人がホームレスになる主な原因として人間関係の喪失が大きく関わっていることは、「ホームレスのすべて」で触れたとおりである。それゆえ、たとえば「自立生活サポートセンター もやい」などでも、人と人とのつながりやきずなを重視した活動方針を持っているし、他にも「tenohasi」「さなぎ達」など、こうした方...
スポンサーリンク