ニートと引きこもり(5)

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 引きこもりやニート、あるいはフリーターなどを生み出した原因と考えられるものを、これまで聞いた、あるいはつらつらと思いつくままに挙げてみた。

  • 産業
    • 製造業の衰退と産業の空洞化によって労働市場が悪化し、失業が増加した
    • 不況下、会社が中高年労働者を保護し若い社員を育てる役割を放棄したため、若者の就職市場が悪化した
    • 同時にリストラも進み、終身雇用が崩壊した
    • サービス業の増大で臨時雇用が増え、雇用環境が不安定化した
  • 社会
    • 産業社会が成熟した結果、ライフスタイルの多様化、流動化、個人化が進み、伝統的な社会規範が弱まった
    • 就職→結婚→子育てという従来の自立パターンが消滅し、成人化への標準的モデルが崩壊した
    • 本人の選択的自由は増したが、同時にそれはまたリスクも大きい選択であるにもかかわらず、すでに社会は「こうすれば大丈夫」というモデルを示せなくなっている
    • 本人の自由意志を尊重するとしつつ、しかしその裏ではもはや社会はその責任を負わずに済ませ、自己責任に帰結させてしまう社会構造になった
  • 家庭
    • 「企業戦士」である父親不在の家庭が増え、母子密着が進んだ
    • 個人化が進んだ結果、家庭でも家族より個人が優先するようになった
    • 親自身「こうすれば大丈夫」ということが明確にわからないため自立への道筋を示せなくなり、教育のみを強化するしかなかった
  • 教育
    • 産業の高度化に対応するため、教育が長期化した
    • 教育費の高騰により、自宅から学校に通う若者が多くなった
  • 住宅環境
    • ワンルームマンションなど住宅費が高騰し、部屋を借りる費用が増大した
    • 食事や洗濯など親掛かりで、若者にとっても好都合であった
  • 地域
    • 個人化が進んだ結果、地域社会での人間関係が希薄になった
    • 「子供は勉強が仕事」といった風潮が強まり、家庭や地域における役割から若者がスポイルされた
    • 長期間にわたって実社会との接点がないため、社会に対する若者の不安が増大した
  • その他
    • 偏差値のみで人間のすべてを判断する「学校化社会」(宮台真司)が進んだ
    • 偏差値競争の只中で、若者は常に勝ちつづけることを要求される
    • 抑圧され、あるいは疲弊し、また自信なく不安な若者は、家庭・学校・社会という学校化された場所から「第4空間」(宮台真司)へと流出ないし引きこもった

 これだけ挙げてもまだまだ一部なのだろうが、産業構造・社会・家庭・教育・住宅環境・地域社会など、さまざまな分野で大きな構造的変化が起きていて、その結果としての状況なのだということのようである。むろん、このほかに個々の資質や資源などが絡んでくるわけだけれども、それにしてもこれだけのものをすべて親や本人だけの責任に帰属させてしまうのは、なにかあまりに社会という存在の影響をないがしろにしているように思える。

 本来、人間は社会的な動物であったはずなのだから、社会の影響を多大に受けて生きている存在でもある。それらをないことにして、すべて個人的な自己責任としてバッシングの対象としてしまうのは、むしろバッシングする側の個人化がゆき過ぎ、自分たちの社会に対する責任を回避していることにはならないだろうか。

 いずれにせよ、モデルどおりに生きても生活が保証されるわけでもなく、増えた選択肢も失敗はすべて自己責任に帰結させられ再起もままならないのであれば、現代の若者はむかしより遥かに厳しい状況にいるといってよいのではないか。能天気な批判などしている場合ではないようだ。なにしろ、彼らはこれからの時代を担ってゆかなければならないのだから。

★今日のポイント

  • ニート・引きこもり・フリーターなどの原因としてこれまでに見聞きしたものをまとめると、産業・社会・家庭・教育・住宅環境・地域社会など、さまざまな分野で起こっている大きな構造的変化が原因らしい
  • 個人の資質はあるにしても、自己責任にしてしまうのは行き過ぎ

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