起き抜けの景色

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TS350334

 眼を開けると茂った木々の向こうに青空が見えた。しばらくぼんやりしてから公園の硬いベンチの上、えいやッと身体を起こす。雨が過ぎ去って、今日は暑くなりそうな予感がする。どこか日陰を探そう。

 ホームレスになりたてのころ、眼を覚ましてすぐには、自分の居場所がわからないことが多かった。見慣れぬ高い天井が見えたり、青空を流れてゆく白い雲が見えたりした。それを眺めながら、ほんの数秒、激しい混乱に襲われた。

 いったいここはどこなのか? なぜ自分はこんなところにいるのか? 懸命になって過去の記憶をさかのぼろうとするのだ。そうして直ちに、自分には帰る家がないことを思い出し、そのために病院の待合室だとか公園のベンチだとかで寝たのだと気づくのだった。あの数秒間に襲ってくる、わけのわからない不安といったらなかったものだ。

 けれど、今はもうあのような恐怖はない。眼を覚ますと、毎日ちがう景色が見える。それがあたりまえの生活になってしまったのだ。眼を開けると、見える風景がいつもちがう。もう驚くこともなくなってしまった。

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