「ミッドナイト・ホームレス・ブルー」開設3周年

スポンサーリンク

影の健次郎

 おそらくどなたも気づかなかっただろうが、過ぎ去りし先日6月10日で、「ミッドナイト・ホームレス・ブルー」は開設3周年を迎えた。よくもまぁ3年もつづいたものだと我ながらブッタマゲる。過ぎてしまえばあっという間……などということはまったくなく、狂ったようにひたすら書きつづけてきたことの積み重ねで、それが今もつづいているというだけの話だが。

 ひとえに、このような取り柄のない弱小ブログに付き合っていただいた読者のみなさんのおかげである。お礼申し上げたい。

 延べ人数、3年間でおよそ33万人の方においでいただき、おおむね126万ページを読んでいただいた。年に11万人、月に約9,000人、1日で300人ほどになる。現在は200人程度にまで減っているけれど、こういうものは長くつづけていればいろいろあるので、すなわち長くつづけることが結局大切なのだろう。コツコツとね。しかし、ホームレスという立場上、長くつづいては困るわけで、なんだか困ったものなのである。

 ブログがつづいていることも異常だけれど、ホームレス状態がつづいていることも異常だ。5年半以上、ホームレスなのである。日数にして2,000日を超えるのだ。そのあいだ、自分の家、自分の部屋というものに住んでいない。布団に寝た日数は30日に満たず、ネットカフェに泊まった頻度は正確にはわからないが、最初の2年半は完全な路上生活だし、残り3年を3日に1回としても、なんだ? よくわからないが、最低でも1,500日以上は路上に寝泊りしていたのである。

路上に寝泊りといっても、夜は寝ずに歩きまわっていて、日中に公共施設などで仮眠することが多かったから、公園のベンチなどで眠る日はそれほど多くはなかったように思う。とはいえ、昼間の仮眠は仮眠に過ぎないので、夜間にどうしようもなく眠気に襲われることも多く、するてぇとやはり路上に倒れ込んで寝たのだから、おそらく半分の700日ぐらいは屋外で寝ていたのだろう。ムチャクチャである。

 当初は、家族に対する怒りと路上環境の厳しさに半狂乱のようになっていて、歩きながらわめいたりそこいらのものを蹴飛ばしたり街道を眼をつむって横切ったり、なんだかカゲキな生活だった。そういう時期を過ぎると、今度は完全な無気力状態がやってきて、ほとんど廃人か死人のような生活になった。

 ブログをはじめたおかげで廃人を脱することはできたように思うけれど、ふつうの日常生活に戻れるだけの気力はまだまだわいてこない。意思ばかりが空まわりしている。心の体力がついていないのだろう。

 これはしかしもの凄いな、と思った。過去など思い出したくもないし、実際、うしろを振り返ろうとすると、なにか巨大な壁が立ちふさがっていて、容易に記憶をたどることができない。心が記憶を追いたがっていないのだ。それでも壁の隙間から断片的に見える過去をのぞき見てみると、これはやはりもの凄いな、と感じる。

 なぜこんな過酷な生活を送ってこられたのか、どう考えてもわからない。ふつうなら、とっくのむかしに誰かに助けられているか、そうでなければ死んでいるのじゃないだろうか。よく生きてるよなぁ……。車にはねられたり、襲撃されて殺されたり、首を吊ってしまったり、心臓発作を起こしたり、行き倒れになったり、凍死したり、餓死したり、どうしてしなかったのだろう? 生き延びているのが奇跡のようだ。これは奇跡だよ、うん。

 路上という「戦場」も長くなると、知らずにそれなりの知恵がつくということなのだろうか? まぁみなさんのおかげ、ということにしておこう。そのほうが健康によい。

関連記事

年忘れホームレス座談会 「なんじゃ、健次郎。おぬし、またひとりぼっちになってしまったのう」 「よせやい。元に戻っただけじゃねぇか」 「そうもいえるが……。で、どうじゃったかな。ブログを1年半やってみて」 「……疲れた、というのが率直なところだな」 「そうか、疲れたか」 「俺のような状況にあって、ふつう、こういうことはしね...
Show me a way!  梅雨入りしてからというもの、南関東は連日、凄まじいまでの暑さがつづく。レンガだかタイルだかの張られた路上からの照り返しは猛烈だ。ぼくはやや脱水状態気味であり、あまり体調がよろしくない。みなさんもお身体お大事に。...
裏切りのホームレス 俺になにかを期待していた人がいるかも知れないが、残念なことにご期待には添いかねる。たとえば、俺が路上から脱出することを期待していたボランティアの人たちが当初わんさといたけれど、俺が期待を裏切ったので今はもうほとんど残っていない。すこぶるつきでカンのよいボランティアは初めからそのあたりを見抜いていて、...
ホームレス列伝(2)  みんながささっと夕食を済ませてさっぱりとシャワーを浴び、一服つけてさぁボチボチ横になろうかという時分だった。ぼくはベッドにも向かわずに、今や唯一の住まいとなったホームレス施設のベンチに未だうずくまっていた。  砂利を踏む湿った音に顔を上げた。痩せた青い顔が闇に浮かぶ。Aちゃんだ。 「隣、い...
スポンサーリンク