眠りを拒絶するベンチ(その1)

スポンサーリンク

TS350256

 岡本太郎の作品に「座ることを拒否する椅子」というものがあって、川崎市市民ミュージアムにも所蔵されているが、これは座面にいろいろなものが彫られていて、平らでもなく柔らかくもなく、およそ座り心地のよい椅子ではない。がしかし、これは芸術だからそれでよい。

 写真は同館の玄関脇にあるベンチ。むろん岡本作品ではない。横になることができないように仕切りがついているけれど、もともとこのベンチにこんなものはなかった。近年になって同館が誇らしげにつけた、アトヅケのシロモノなのである。

 岡本太郎をもじれば、さしずめ「眠りを拒絶するベンチ」だが、ホームレス対策というその発想がなんともイヤラシイ。仮にも芸術と関わる場所にこのようなものを作ったとあっては、今は亡き御大もさぞや呆れ果てていることだろう。

 ホームレス対策ということで、こうした仕切りを持つベンチが非常に増えたけれど、これを最初に考え出した奴は、ベンチで眠らざるを得ない生活を送る人間の苦しみを考えたことがあるのだろうか。おそらくよいアイディアだと喜んだことだろうが、被爆者の苦しみを考えずに原爆を作り出した科学者と変わらぬ心ではないのか。発想そのものがあまりにも醜く情けない。人間の風上にも置けぬ輩だと感じる。

関連記事

いま  写真は新年を2時間後に控えた川崎稲毛神社の参道。数時間後には初詣客でぎっしりと埋まる。去年の大晦日から元旦にかけては、この神社で甘酒をいただき、焚き火などにあたって過ごしたと記憶しているが、今年はその必要がない。 ***  今月の初めから今日まで、ぼくがネットカフェにこなかったのは...
眠る健次郎  5月23日の深夜、公園の古ぼけたベンチで寝る自分を撮影。暗くてよくわからないが、手前が頭で向こうが足である。身体を右の背もたれのほうに横向けている。ひざが曲がっているのはベンチの長さが足りないためだ。  この日も寒くて2時間ぐらい眠るのが限度だった。白く浮き出た手が、自分のものとはいえ、...
いつもの風景  2月1日深夜に撮影した川崎市内の某電話ボックス。暖冬とはいえかなり冷え込んでいても、ホームレスはご覧のとおりダンボール1枚でへっちゃらだ。ちなみに、ドアの下部分は大きくえぐれていて素通しになっており、防寒にはまったく役立っていない。...
ハードボイルドな空  暗くどんよりとした鉛色の雲が、この街を押し潰すように低く垂れ込めていた……などというとハードボイルド小説の書き出しのようだが、5月31日の夕刻、東京地方は雷鳴とどろいて、まさに鉛色の雲がどよよんと押し寄せた。こののち凄まじい豪雨となったのはいうまでもない。  ハードボイルドなホームレスは、し...
スポンサーリンク