ホームレスとの接し方

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ホームレスへの援助といっても、国がおこなう大規模なものから個人が細々とつづけるボランティアまで、その方法はさまざまです。あるいはまたその動機も、社会全体のことを考えるといった大きな視点から、困っている人を助けたいという個人的な理由まで、これまたいろいろです。

動機や方法はいろいろですが、もしあなたがこれからホームレスになんらかのかたちで接することがあるならば、いくつかの点に留意することをお勧めします。それによってあなたの援助は無駄な部分が減り、より効果的なものとなるはずです。

無視してはいけない

まったく見ず知らずの人、しかも相手がホームレスであれば、なおのこと声をかけるのはたいへんに勇気のいることです。しかし、なにかの拍子に、突然眼と眼が合ってしまうかも知れません。どうしましょうか? スッと視線を外して知らんぷり? 実はホームレスに限らず、人間にとって人から無視されるのは、心理的に大きな打撃をこうむることなのです。できるだけ無視しないようにしてみませんか?

あいさつしてみる

あなたが人見知りだったり引っ込み思案だったりしたら、目礼だけでも充分です。相手の眼を見てひょいっと頭を下げる。あとはそのまま通り過ぎてもまったくかまいません。

もしあなたがあいさつを苦にしない人だったら、ひとこと声をかけるのもよいことです。見ず知らずのホームレスにあいさつするのは抵抗があるかも知れません。そういうときには近所でよく見かけるおじさんだと思ってあいさつしてください。よくいるものです。近所の人らしいのだけれどどこの人だかわからない、名前も知らないけれどなんだかいつも見かけるおじさん……。そういう人にあいさつするつもりで声をかければ、自然とことばは出てきます。

不安があるのなら練習しておくのも手です。これにはうってつけの方法があります。早朝、公園や河原などを散歩してください。すると、早起きのお年寄りなどとたくさんすれちがいます。そういうお年寄りたちの中には、すれちがう見知らぬ人にあいさつを欠かさない、気持ちのよい人たちがいっぱいいるのです。慣れていないとドキリとするかも知れませんが、そのうち自然と返事ができるようになりますよ。

プレゼントする

ホームレスは困っているように見える。だからなにかしてあげたいけれど、どうしたらよいのだろう……。そう考えたあなたは他人の痛みを理解しようとする人です。しかし、実際にはどうすればよいのでしょうか。

その答えのひとつは、彼らが必要としているものをプレゼントすることです。大げさである必要はまったくありません。それはむしろ彼らの居心地を悪くすることにつながってしまいます。簡単で負担が少なく、しかも必要不可欠なものがベストなのです。

  • 新品の下着類(シャツ・パンツ・靴下)
  • 洗面道具(歯ブラシ・歯磨き粉・せっけん・シャンプー・ひげそり)
  • 薬(風邪薬・頭痛薬・胃薬・目薬など)
  • 蚊取り線香(夏)
  • 使い捨てカイロ・手袋・マフラー(冬)
  • 清潔な毛布
  • 上着など
  • アルカリ電池
  • ガスボンベ(要注意)
  • 金銭(要注意)

以上はごく一般的なリストです。上着などは中古でもよいですが、下着類は新品でなければなりません。よほどのことがあっても、他人のパンツをはける人は滅多にいないからです。肌に近いものほど、口や耳などに入れることがあるものほど、新品である必要があります。そして、実はそうしたものはホームレスの手に入りにくいのです。

高級なものである必要はまったくありません。百円ショップで売られているもので必要十分です。薬などは試供品でよいでしょう。あるいは余った薬の一部を分けてあげてもかまいません。ただし、使用期限には気をつけてください。

ラジオなどを聴くのを唯一の楽しみにしているホームレスもいます。そうなると電池は必需品ですが、これは機器によってサイズがあるので相手に確認したほうがよいでしょうね。安いマンガン電池は持ちが悪くて使いものになりませんから、アルカリ電池をお勧めします。

テント生活のホームレスにはボンベタイプのガスコンロを使っている人が多くいます。調理のほかに冬場はストーブ代わりにも使います。ですから汎用のボンベは必需品ですが、火を使う危険性を考えると、これを贈り物とするのは必ずしもよいことではありません。しかし、テント内は想像以上に寒いものです。ですから一応リストに加えてみました。あなたご自身で判断してください。

金銭の授受は慎重であるべきです。なにかをしてもらった代金、お礼、カンパ、寄付、義援金などの名目で差し出すことは可能ですが、お酒やギャンブルに消えてしまう可能性もあるので、慎重になすべきでしょう。借金というかたちは作らないほうが無難です。ふつう彼らには、返すだけの収入がありません。

あとはあなたのお好みで食事を差し入れるもよし、なにか気の利いた一品を取り混ぜるのもよし。ただし、本は好みがありますから、吟味はよほど慎重にしなければなりません。興味のない本を読むことほど辛いことはありませんから。

以上のものをパッケージングし、ホームレスへのプレゼントとします。アメリカで「The Homeless Guy」を運営するケヴィン・バービークスは、これを「ギフトバッグ」と呼んでいます。彼はこうしたもののほかに、

  • くし
  • におい消し(デオドラント)
  • 爪切り
  • ポンチョ(雨具)
  • 日焼け止め
  • ニットキャップ

なども挙げていますが、中でもユニークなのは「マクドナルドの商品券」でしょう。ホームレスにとって、ファストフードは使いやすい場所のひとつです。一杯百円也のコーヒーで数時間、暑さ寒さをしのげるありがたい場所でもあるのです。マクドナルドの商品券は、安らぎへのチケットとなるでしょう。

あげてはいけないもの

ホームレスには必要なものがたくさんありますが、あげてはいけないものもまた存在します。

  • アルコール類

以上のものは、原則としてプレゼントしてはいけません。酒は彼らをタチの悪い酔っぱらいにしてしまい、害になりこそすれ薬にはなりません。よくなにかのお礼に一升瓶をぶら下げて、などという話を聞きますが、これはなにも知らない愚か者のすることです。ホームレスがホームレスのままであることに手を貸している、犯罪的な行為だと断罪しておきましょう。

これらのものは双方の関係を悪化させます。頼まれてもやんわりと断らねばなりません。場合によっては、それ以上関わるのを避けたほうがよいこともあるでしょう。

話をする

ホームレスは一般の人たちと話をする機会があまりありません。ホームレス同士では話をしますが、世間への関心が薄くなっていることも多く、話題はかなり限定されてしまいます。そのために、世間の感覚からずれてしまっていることもままあるのです。

ホームレスとたわいのない世間話をしてみてください。会話を重ねてゆくことで、少しずつ社会への関心を取り戻すことができるかも知れません。

話を聴く

ホームレスに限らず、人間にとって最大のプレゼントのひとつは、人に自分の話を聴いてもらうことです。逆にいえば、他人の話を聴いてあげることは、最大のプレゼントになるのです。人に自分の気持ちを聴いてもらうと気分が安らいで落ち着きを取り戻し、それが新しい活力がわく元になることも多いのです。

しかし、実際には、人の話を聴くのは容易なことではありません。相手の話に割り込んだり、関心が持てなくてあくびをしたり、自分の意見をとうとうと述べてしまったり、説教をはじめたりして、なかなか相手の話を黙って真剣に「聴く」ことができません。

これには特別な訓練が必要な場合もあります。いちばん手っ取り早いのはカウンセリングを学ぶことです。カウンセリングはその入り口に「傾聴」という初歩的な部分がありますが、これを学んでおくだけで、これまでとは別次元の相手の話を「聴く」ことができるようになるでしょう。機会があったら、ぜひ勉強してみてください。ホームレス支援に限らず、日常生活にとても役立つことが実感できるはずですよ。

食事に誘ってみる

ホームレスの気持ちをやわらげる、あるいは話を聴くには、食事に誘うのもよい方法です。怒りながら食事をする人は滅多にいません。ほとんどの人間は、食事をするとこころが安らぐものです。

場所はファストフードやファミリーレストランで十分です。ホームレスによってはそういった場所を嫌う人もいるので、公園のベンチでコンビニのお弁当を広げてもよいでしょう。

誘い方にはコツが必要です。ご馳走してあげるとかおごってあげるとか思っていると、その気持ちはすぐにバレてしまいます。人にもよりますが、多くのホームレスはこうした「施し」を嫌いますし、また非常に敏感になっているものです。

食事に誘うときに最もよい方法は、「付き合ってもらう」ことです。自分ひとりで食べる食事はまずい、だから付き合って欲しい、でもよいですし、自動販売機で缶コーヒーを買ったら一本当たってしまった、ひとりじゃ二本も飲み切れないのでもらって欲しい、でもよいでしょう。

何度か顔を合わせたことのあるホームレスが相手なら、思い切って「自分の愚痴を聞いて欲しい」と頼んでみるのもおもしろいでしょう。仕事の愚痴でもよいですし、恋人や家族の愚痴でもよいですね。あなたの役に立ったと彼が思ってくれればしめたものです。人の役に立ったと感じることは、人間の中に大きな充実感をもたらすものだからです。しかし、あなたの愚痴は二度と聞きたくないと思わせるほどやり過ぎてはまずいことは、むろんいうまでもありません。

ひとつ注意すべきことがあります。それは、絶対にアルコール類を口にしないことです。先ほども触れたように、酒はホームレスをただの酔っぱらいにしてしまいます。いっしょに酒を呑んで日ごろのうさを晴らしてみたところで、明日から彼らの生活が変わるわけではありません。酒はむしろ彼らをみじめにします。決して酒席を設けてはなりませんし、もし彼らから誘われても断らねばなりません。

以上、これらのことに留意しつつ、ホームレスと接してみてください。これまでとはまたちがった人間関係が、そこに現れてくるかも知れません。それはまたホームレスとだけではなく、日常の生活においても、なにかの新しい発見につながる可能性を秘めています。つまるところホームレスというのは、ただの人間に過ぎないのですから。

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