武州無宿・健次郎はなぜブログを書くのか?(続)

スポンサーリンク

先日、知人に聞いたことが、改めて「やっぱりなぁ」であった。このブログでいちばんおかしいのは、やはり作者がホームレスということなのだ。ホームレスなんだから仕事すればいいじゃん、俺たちこんなに苦労してがんばって仕事しているのに、ホームレスがよりによってなんでブログなんか書いているんだ、ふざけやがって……と、どうしても納得がゆかない。

では、ぼくはこのブログを「仕事」のつもりで書いている、といったらどうだろうか。ロクな収入にならないだけだ。あなたはもっと器用で、だからいろいろな仕事ができるわけだけれども、ぼくはまるきり不器用な人間で、自分でできそうなことを探したとき、文章のほか、もはやまったくなにも残ってはいなかった。ぼくはその唯一、自分ができそうなことをやっているに過ぎないのだ。

ぼくは若いころからさまざまな仕事を経験してきた。ゲーム機製造工場、プログラマー、ゲーム企画制作、ゲームセンター店員、パソコン雑誌出版社、写真パネル製造会社、写真通信社、航空写真会社、写真スタジオ、パソコン機器製造工場ライン、宅配便仕分け作業、食品容器製造工場……。なにひとつ満足にできたためしがない。いくつかの会社でクビになり、いくつかの会社で出社拒否症に陥った。最後は抑うつ症になった。そんな生活史の中、唯一、人並みかと思われるものが文章だった。だから今、書いている。

ホームレスなんだから仕事すればいいじゃん、というのは、ぼくがあなたに、
「そんなに苦労が多くて給料が少ないなら、もっと稼げて楽な仕事すればいいじゃん。なんでそういう仕事しないの?」
というのとまったくおなじ理屈なのである。むろん、あなたは、そんな仕事がないことは承知のはずだ。だから、猛烈に反発するにちがいない。だが、実際は、そんな高給を取る能力がないからこそ、安月給に甘んじざるを得ないのだ。

「もっと稼げて楽な仕事すればいいじゃん」
この問いに対するあなたのその答えが、すなわちぼくの答えである。双方の問いは正反対のようでいて、その実まったくおなじ側に属しているのである。

関連記事

毒の盛り方 平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学M.スコット ペック M.Scott Peck 森 英明 草思社 1996-12by G-Tools この本はだいぶ以前に話題になったから、ご記憶の人も多かろう。おどろおどろしいタイトルがついているが、精神疾患の一種である人格障害を取り扱った書で、セラピス...
聖夜の祈り 静寂のクリスマス・イブ。ふだん浮かれた夜の街はどこか寂しげで、それでいて人々は、胸のうちにある幸せを隠し切れない足取りで流れてゆく。青と白の電球で飾られたツリーに見守られながら、静かに肩を寄せ合うカップル。跳ねるように歩いてゆくおさな子を追う母親の温かな眼。赤と緑に彩られた包みをぶら下げて急ぐ男は、...
勝つことだけを信じて 書店を眺めたりインターネットを歩いていると、近ごろやたらと眼につくことばがある。特定の単語というよりも、ひとつの方向を指し示すキーワードの群れだ。それは「金持ちナントカになる法則」だの「ここがちがう成功者のナントカ」だの「絶対に勝つためのナントカ」だの、そういった一連のことばの群れである。こうしたも...
いまだ哀しみを知らぬ者たちに捧ぐ ホームレスとは、生きる哀しみを心に刻み込んだ者たちのことである。 あなた方がもしもいまだ哀しみを知らぬ生を送っているのだとしたら、ホームレスのうちに宿る一片の哀しみを探し出すがよい。探し出して、身にまとうがよい。あなた方が知るべきは哀しみである。あなた方は弱過ぎる。哀しみを知らぬがゆえに。 自己...
スポンサーリンク