武州無宿・健次郎はなぜブログを書くのか?(続)

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先日、知人に聞いたことが、改めて「やっぱりなぁ」であった。このブログでいちばんおかしいのは、やはり作者がホームレスということなのだ。ホームレスなんだから仕事すればいいじゃん、俺たちこんなに苦労してがんばって仕事しているのに、ホームレスがよりによってなんでブログなんか書いているんだ、ふざけやがって……と、どうしても納得がゆかない。

では、ぼくはこのブログを「仕事」のつもりで書いている、といったらどうだろうか。ロクな収入にならないだけだ。あなたはもっと器用で、だからいろいろな仕事ができるわけだけれども、ぼくはまるきり不器用な人間で、自分でできそうなことを探したとき、文章のほか、もはやまったくなにも残ってはいなかった。ぼくはその唯一、自分ができそうなことをやっているに過ぎないのだ。

ぼくは若いころからさまざまな仕事を経験してきた。ゲーム機製造工場、プログラマー、ゲーム企画制作、ゲームセンター店員、パソコン雑誌出版社、写真パネル製造会社、写真通信社、航空写真会社、写真スタジオ、パソコン機器製造工場ライン、宅配便仕分け作業、食品容器製造工場……。なにひとつ満足にできたためしがない。いくつかの会社でクビになり、いくつかの会社で出社拒否症に陥った。最後は抑うつ症になった。そんな生活史の中、唯一、人並みかと思われるものが文章だった。だから今、書いている。

ホームレスなんだから仕事すればいいじゃん、というのは、ぼくがあなたに、
「そんなに苦労が多くて給料が少ないなら、もっと稼げて楽な仕事すればいいじゃん。なんでそういう仕事しないの?」
というのとまったくおなじ理屈なのである。むろん、あなたは、そんな仕事がないことは承知のはずだ。だから、猛烈に反発するにちがいない。だが、実際は、そんな高給を取る能力がないからこそ、安月給に甘んじざるを得ないのだ。

「もっと稼げて楽な仕事すればいいじゃん」
この問いに対するあなたのその答えが、すなわちぼくの答えである。双方の問いは正反対のようでいて、その実まったくおなじ側に属しているのである。

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