まだ間に合うよ

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8月19日付の日経新聞1面コラムで、博士号を持った人の就職難について触れられている。文部科学省は1991年から大学院を拡充して博士の大量養成に乗り出し、2004年度には博士課程修了の研究者が約15,000人になって、当時の倍に増えたという。しかし、就職できない博士が増えているというのである。

ある人材派遣業者は、
「自分の研究にこだわりすぎて企業で働く意味を理解していない。だから就職できない博士は多い」
日立製作所の副社長は、
「すぐにリーダーになれ、グローバルな視点を持つ博士がほしい」
「一芸に秀でるのはもちろん、専門とは違う分野も勉強してほしい」
という。ノーベル賞受賞の江崎玲於奈さんは、
「指導者の(物まねしかできない)クローンのような博士が多い」
とのこと。

博士になるにはたいへんな努力をしたのだろうけれど、それが必ずしも就職に結びつかないとは、いやはやエライ時代になったものだ。だが、まったく理解できないわけじゃない。要するに、思考の柔軟性を欠いてしまったのでしょう。自身の研究分野にはすぐれて詳しいが、既存の方法で正解を求めてステレオタイプになぞってゆくのみ。それ以外の世界については知識なく、物事を創造的に見る眼が培われていないということなんじゃないか。

むかしはね、豊富な専門知識を使って正解を出せる人間が重宝したんだ。公式をたくさん知っているスペシャリストがありがたがられた。だけど、今は正解がない。既存の公式をいくら知っていても実際に役立たないと意味がない。だから、単なる研究者は要らないんだろうね。

これはたぶん教育とも関係してるのだと思う。俺らのころだってそうだったが、今の勉強だってすでに正解があって、それを導くための公式を覚えることに終始してるんでしょう。すでにだれかが作った公式があって、もう答えが出てるんだよね。

以前、養老孟司さんの引用記事を読んだことがあったけれど、今の人は問題点を指摘するとすぐに、
「じゃあ、どうすればいいんですか」
と訊いてくるのでダメなんだ、というような話だったが、正解を求めるには公式を使うように仕込まれ、すでに正解があると教えられてきてるのだから無理もない。これじゃ正解のない現代に通じるはずないよね。

これはさぁ、実はホームレス問題なんかにも関わってくることなんですよ。どういうことかというと……あ、ネットカフェの退店時間だ。金がないので延長できないよ。じゃ、また。

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