裏切りのホームレス

スポンサーリンク

俺になにかを期待していた人がいるかも知れないが、残念なことにご期待には添いかねる。たとえば、俺が路上から脱出することを期待していたボランティアの人たちが当初わんさといたけれど、俺が期待を裏切ったので今はもうほとんど残っていない。すこぶるつきでカンのよいボランティアは初めからそのあたりを見抜いていて、ア~ンタッチャボーッ! 君子危うきに近寄らずで鼻も引っ掛けないが、要領のよさでは賢明であったのかも知れない。

むかしから、俺はこのようにして他人を裏切ってきた。あらゆる期待、大きな期待からあるのかないのかわからぬちいさな期待にさえ応えるために、ジタバタとやってきては不満足な結果しか残せず他人を失望させてきた。親、兄弟、恋人、友人、知人、教師……あらゆる人々の期待を裏切った結果、今、路上に在る。

俺は現在、人間関係の見切りが異常に早い。そこになにか期待の眼がほの見えるか見えぬうち、その気配を感ずるや否や、肥後同田貫をハンパな英信流でもって抜き放ち紫電一閃、そこかしこのものを断ち斬って見せ、
「ご期待には添えぬ」
などと臆面もなくホザく。期待したあとの落胆を思えばこそ、失望の哀しみを和らげてあげられれば……というのは真っ赤な大ウソで、むしろ失望からくる怒りを惹起させないための方便なのだが、これすなわち裏切り以外のなにものでもない。

「人の期待に応えたい」
というのは自己承認欲求と関わっていて、要するに他人に認めてもらうことで自分の価値を高めることなのだけれども、俺の価値はときを経るごとに急落しつづけていて、いい加減に底を打ってもよさそうなものだが、なお下落中。今やわが家族、わが生みの親などは、
「おまえなど、どこかへ行って死んでくれればよい」
と平然といい放つ始末であり、まだ生きていると知るやわが兄弟などは、みずから駆るスポーツカーで俺を轢き殺そうとまでしたという、いわく因縁つきの裏切りなのである。

そんなわけだから、俺はもはやご期待には裏切りをもって報いる以外、なにもできない。裏切りのみの人生を生きてきたので、裏切る以外なにもできないのだ。他人を失望させる以外に能がない。それが俺の唯一の才能だ。哀しくも、むしろ情けない人生だった。

関連記事

勝つことだけを信じて 書店を眺めたりインターネットを歩いていると、近ごろやたらと眼につくことばがある。特定の単語というよりも、ひとつの方向を指し示すキーワードの群れだ。それは「金持ちナントカになる法則」だの「ここがちがう成功者のナントカ」だの「絶対に勝つためのナントカ」だの、そういった一連のことばの群れである。こうしたも...
卒業 このブログには、元気いっぱいの人はあまりやってこない。ぼくがいつもどんよりとした気持ちでいるものだから、どこかしらその気持ちに共振する心を持つ人たちがやってくる。誰しもが多少は鬱屈したものを持ってはいるにしても、さほど悩みなく日常を乗り切って歩いているような人は、まずもってその琴線に触れることがない...
ほんとうのホームレス問題(ホームレス問題ヲ語ルトイフコト)... 小説の書き方には2種類ある。「わたし」が主人公の1人称小説と「誰か」が主人公の3人称小説だ。1人称のほうが書きやすく思えるので、たいていの人は「わたし」を主人公に書きはじめる。が、実際には1人称のほうがむずかしい。したがって、初心者の書いた1人称小説は読むに耐えぬものとなる。 理由はさまざまだが...
ホームレスタウン ~葬られてゆく人々~...  今回は写真のみ。説明は無用と思う。
スポンサーリンク